合同会社はやばい?設立4年目のひとり社長が感じたデメリットと、それでも合同会社でよかった理由
「合同会社はやばい」と検索すると、不安になる言葉がたくさん出てきます。結論から言うと、合同会社そのものがやばいわけではなく、向き・不向きがはっきりした会社の形です。
特に、ひとりで経営する小さな会社なら、よく言われるデメリットの多くはあまり問題になりません。この記事では、「やばい」と言われる理由をひとつずつ分解し、実際はどうなのかを法律や公式の情報で確認します。そのうえで、設立4年目の私が感じたデメリットと、それでも合同会社でよかった理由を書きます。

正直、設立のときは深く比べたわけではありません。だからこそ、今振り返って「合同会社で困ったこと・困らなかったこと」を正直に書いておこうと思います。
合同会社が「やばい」と言われる理由を分解する
「やばい」「やめとけ」と言われる理由は、だいたい次の6つに分けられます。それぞれ、ひとり合同会社にとってどれくらい問題かを右の列にまとめました。
| 言われる理由 | 中身 | ひとり合同会社だと |
|---|---|---|
| ① 知名度・信用が低い | 株式会社より歴史が浅く、取引先や金融機関に「小さい会社」と見られることがある | 業種や取引先しだい。実績や取引の中身で見られる場面も多い |
| ② 代表の肩書が「代表社員」 | 登記上は「代表取締役」ではなく「代表社員」。「社員?」と聞き返されることがある | 説明が一言必要になるくらい |
| ③ 資金調達の手段が限られる | 株式を発行できないので、株式での出資を集めたり上場したりはできない | 出資を集める予定がなければ影響は小さい。融資は合同会社でも受けられる |
| ④ 社員どうしの対立・持分 | 出資者(社員)が複数だと、意見が割れたときや持分を譲るときにもめやすい | 社員が自分ひとりなら起きない |
| ⑤ 株式会社への変更に費用 | 後から株式会社にするには「組織変更」の手続きと費用がかかる | 将来の予定しだい。費用は次の章で確認 |
| ⑥ 事務負担・固定費 | 決算・税務申告、社会保険、赤字でもかかる住民税の均等割など | これは合同会社に限らず「法人」全体の話 |
出典:会社法(e-Gov法令検索)の持分会社・株式会社の規定をもとに筆者が整理。2026年10月時点。
こうして分けてみると、④は社員が複数いる場合の話、⑥は株式会社でも同じです。ひとり合同会社で本当に考えるべきなのは、①〜③と⑤、つまり「取引先からの見え方」と「将来、株式会社にする必要が出るか」の2点です。

実際はどう?株式会社との違いを法律で確認
「やばい」の裏返しで、合同会社には株式会社よりラクな点もあります。主な違いを、法律と国税庁の公開情報で確認しました。合同会社と株式会社の選び方そのものは合同会社と株式会社の比較記事で詳しく書いています。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立登記の登録免許税 | 資本金×1,000分の7(6万円未満なら6万円) | 資本金×1,000分の7(15万円未満なら15万円) |
| 定款の認証 | 不要 | 公証人の認証が必要(手数料がかかる) |
| 決算公告 | 義務なし | 定時株主総会の後に貸借対照表などの公告が必要(会社法440条) |
| 役員の任期 | 任期の定めなし(重任の登記が不要) | 取締役は原則2年。株式の譲渡制限がある会社は定款で最長10年まで(会社法332条)。任期ごとに登記が必要 |
| 代表者の肩書(登記上) | 代表社員 | 代表取締役 |
| 業務の決め方 | 社員が2人以上なら、定款に別段の定めがない限り社員の過半数(会社法590条) | 株主総会・取締役(会) |
| 出資の受け入れ・上場 | 株式は発行できない。上場もできない | 株式の発行で出資を受けられる。上場も可能 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」(令和8年4月1日現在法令等)、会社法 第332条・第440条・第590条(e-Gov法令検索)。2026年10月時点。
ひとり社長にとって大きいのは、決算公告の義務がないことと、役員の任期がないことです。株式会社だと、任期が来るたびに役員の登記(同じ人が続ける場合も重任の登記)が必要になります。合同会社ならそれがありません。
実際、私は設立してから一度も変更登記をしたことがありません。本店移転や商号変更など、変更登記が必要になる場面と費用は合同会社の変更登記の記事にまとめています。
知名度・信用はどう考えるか
信用の話は、数字で比べるのが難しいところです。事実として書けることを挙げると、私はGMOあおぞらネット銀行・PayPay銀行・三井住友銀行で法人口座を開設しましたが、審査に落ちたことはありません。審査で見られやすいポイントは法人口座の審査の記事に書いています。合同会社であることが理由で口座が作れなかった、ということはありませんでした。
資金調達についても、株式での出資は受けられませんが、融資は別です。私は設立時に日本政策金融公庫の創業融資を受けました(税理士事務所が融資の支援をしてくれ、面談にも同席してくれました)。「合同会社だから融資が受けられない」ということはありませんでした。
株式会社に変えたくなったら?組織変更の流れと費用
「後から株式会社にできないのでは」という心配もよく見かけます。結論は、合同会社から株式会社への変更(組織変更)はできます。ただし、手続きと費用がかかります。法務局が公開している申請書の記載例をもとに、流れを整理しました。
変更後の株式会社の商号・目的・本店、取締役、社員に割り当てる株式、効力発生日などを決めます(会社法746条)。
効力発生日の前日までに、組織変更計画について社員全員の同意を得ます。ひとり合同会社なら自分の同意書です。
官報に公告し、知れている債権者に個別に知らせます。定款の定めに従って日刊新聞紙や電子公告もする場合は、個別の催告を省略できます。
株式会社の設立登記と、合同会社の解散登記を法務局に申請します。会社の印鑑を届け出る場合は、印鑑届書もあわせて出します。
| 費用の項目 | 金額 |
|---|---|
| 組織変更による株式会社の設立登記(登録免許税) | 資本金×1,000分の1.5(組織変更前の資本金のうち一定額を超える部分は1,000分の7)。3万円に満たないときは3万円 |
| 合同会社の解散登記(登録免許税) | 3万円 |
| 官報公告の掲載料 | 実費(文字数などで変わる) |
| 専門家に頼む場合の報酬 | 事務所により異なる |
出典:国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」、法務局「持分会社の組織変更(持分会社→株式会社)の登記申請書」記載例。2026年10月時点。資本金が小さいひとり合同会社なら、登録免許税は最低額の3万円+3万円になるケースが多いと考えられますが、正確な額は法務局で確認してください。
登録免許税だけ見ると、資本金が小さい会社なら最低額で済むことが多い一方、官報公告や書類の準備に時間がかかるのがポイントです。「いつか株式会社にするかも」程度なら、必要になってから考えても遅くはないと私は思っています。
ひとり合同会社ならではの注意点
社員どうしの対立がない代わりに、ひとり合同会社には「社員が自分しかいない」ことによる注意点があります。会社法では、社員の死亡は退社の理由になり(607条)、持分会社は社員が欠けると解散する(641条)とされています。定款で「相続人が持分を承継できる」と定めておく方法もあります(608条)。
⚠️ 持分の譲渡には他の社員全員の承諾が必要
⚠️ 利益の分け方を定款で決めておく必要
✅ 決めるのは全部自分
⚠️ 自分に何かあったときの扱いを定款で確認
⚠️ 相談相手がいない(税理士などが頼り)
自分の定款に承継の定めがあるかどうかは、設立時の定款を見れば確認できます。家族がいる人は、一度目を通しておくと安心です。具体的な対応は、司法書士などの専門家に相談してください。
「法人化そのもの」で後悔しやすいポイント
「合同会社 やばい」と検索する人の中には、実は法人化そのものに不安がある人も多いと思います。「法人化 後悔」「マイクロ法人 後悔」と言われるポイントは、合同会社でも株式会社でも共通です。
| 後悔しやすいポイント | 中身 | 私の場合 |
|---|---|---|
| 赤字でも住民税の均等割 | 利益がなくてもかかる。資本金等1千万円以下・従業者50人以下で、東京都の特別区だけに事務所があれば年7万円 | 1期目から負担。1期目(7か月)は均等割の月割分だけの小さな赤字 |
| 税理士費用 | 法人の決算・申告は個人の確定申告より複雑で、税理士に頼む人が多い | 顧問料は月2万円弱 |
| 社会保険料 | 役員報酬を払えば社長ひとりでも社会保険の対象。厚生年金の保険料率は18.3%で、会社と本人で半分ずつ負担 | 役員報酬は税理士と試算して決定 |
| お金を自由に使えない | 会社のお金は会社のもの。役員報酬は「定期同額」が原則で、期の途中で変えると経費(損金)にならない部分が出ることがある | 経費は「プライベートは入れない」で線を引いている |
| 事務作業が増える | 帳簿付け、請求、社会保険や税金の手続き | freeeに毎月自分で登録し、税理士が確認 |
出典:東京都主税局「法人都民税・事業税及び特別法人事業税の中間・確定申告書(第6号様式(その3))記載の手引」の都民税均等割の税率表、日本年金機構「厚生年金保険料額表」、国税庁 タックスアンサー No.5211「役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」。2026年10月時点。均等割の額は自治体・事務所の場所で変わります。
均等割が赤字でもかかる仕組みは法人住民税の均等割の記事で、設立前に知っておきたい落とし穴は設立前の3つの罠で詳しく書いています。こうした固定費は、売上が小さいうちから法人にすると重く感じやすいので、法人化のタイミングはよく考えたほうがいいところです。
設立4年目の私が感じたデメリットと、それでも合同会社でよかった理由
ここからは、私自身の評価です。事実として書けることだけを並べると、次のようになります。
⚠️ 税理士の顧問料が毎月かかる(月2万円弱)
⚠️ 法人の決算は全部未経験で、税理士に言われるまま対応した
⚠️ freeeへの登録は毎月自分の仕事
✅ 法人口座の審査に落ちたことがない
✅ 公庫の創業融資も受けられた
✅ 役員任期がなく、変更登記も一度もない
振り返ると、私が負担に感じたことはほとんどが「合同会社だから」ではなく「法人だから」でした。株式会社にしていても同じようにかかっていた費用・手間です。逆に、設立費用や役員任期の点では、合同会社にしたことでラクをしています。
もうひとつ正直に書くと、登記・口座開設・税理士契約・社会保険の手続きを、難しく考えすぎていたと思います。実際は、不完全でもまず連絡すれば、窓口や専門家が相談に乗ってくれました。副業時代からの失敗も含めた振り返りは副業12年の失敗とよかったことにまとめています。

逆に「法人にしてよかった」と感じるのは、ある程度大きな会社と取引できるときです。特に上場企業と業務請負の契約を結ぶときなどは、個人だと契約できないケースもあると思います。
もしやめたくなったら:休眠・解散の選択肢と費用
会社は残るので法人税の申告義務は残る。2期連続で無申告だと青色申告の承認が取り消される
均等割は原則かかる(休業届で免除する自治体もあり、扱いは自治体で異なる)
合同会社は株式会社のような「12年でみなし解散」の対象外。再開もしやすい
官報の解散公告 約3.5〜4.2万円。債権者の申出期間は2か月以上
解散の期と清算の期で確定申告が必要。司法書士・税理士に頼むと別途報酬
合計の目安は登記・公告で約8万円+専門家報酬
放置がいちばんよくない選択です。申告をやめると無申告加算税・延滞税の対象になり、均等割も積み上がります。やめるにしても「休眠で止める」か「解散で終わらせる」かを決めて、どちらかの手続きをとるのが、合同会社をやばい状態にしない方法です。
合同会社が向く人・株式会社を考えたほうがいい人
✅ 外部から出資を受ける予定がない
✅ 設立費用・維持の手間を抑えたい
✅ SES・受託など、実績や中身で取引が決まる仕事
⚠️ 取引先や業界で「株式会社」が求められる
⚠️ 他人と共同で出資して経営する(ルールを明確にしたい)
⚠️ 採用で会社の見え方を重視したい
迷ったら、「3年後にどんな会社でいたいか」で考えるのがおすすめです。ひとりで仕事を続けるなら合同会社で困ることは少なく、出資や採用を考えるなら最初から株式会社のほうが二度手間になりません。設立の手順と費用は合同会社の設立手順と費用を参考にしてください。
よくある質問
まとめ
「合同会社はやばい」と言われる理由の多くは、社員が複数いる場合の話か、法人全体に共通する負担でした。ひとりで経営するなら、設立費用が安く、決算公告も役員任期もない合同会社は、十分に現実的な選択肢です。株式会社が必要になる目的がはっきりしているときだけ、最初から株式会社を考えればよいと思います。
- 「やばい」の理由は6つ。社員間の対立はひとりなら起きず、事務負担・固定費は法人共通
- 合同会社は設立の登録免許税が最低6万円(株式会社は15万円)、定款認証・決算公告・役員任期なし
- 株式会社への組織変更は可能。登録免許税は最低3万円+解散登記3万円+官報公告など
- ひとり合同会社は、自分に何かあったときの扱いを定款で確認しておく
- 私の場合、口座審査で落ちたことはなく、公庫融資も受けられた。負担はほぼ「法人だから」のもの

