会社役員のふるさと納税|役員報酬・役員賞与・配当がある人の上限の考え方と、ワンストップ特例が使えない場合【2026年】
会社役員のふるさと納税は、役員報酬(+役員賞与)を「給与収入」として計算すれば、基本は会社員と同じです。ただし役員には、自社から家賃や利子を受け取っている、配当がある、給与が2か所ある、年の途中で報酬を変えたなど、ワンストップ特例が使えなかったり、上限の見積もりがずれたりする落とし穴がいくつかあります。
この記事では、役員報酬・役員賞与・配当がある人の上限の考え方、ワンストップ特例が使えないケースのチェックリスト、報酬を変えた年の見積もり方を、設立4年目のひとり合同会社の社長として毎年寄附している私の実例つきで整理します。ひとり社長に絞った話(経費になるか、企業版との違い)はひとり社長のふるさと納税にまとめています。

役員報酬・役員賞与は「給与収入」として計算する
ふるさと納税の控除は、所得税の寄附金控除と、住民税の基本分・特例分の3段で効きます。自己負担2,000円で済む上限を決めているのは住民税の特例分が「住民税所得割額の20%」までというルールで、所得割額は年間の所得で決まります。
| 控除 | 計算 | 備考 |
|---|---|---|
| 所得税の寄附金控除 | (寄附額 − 2,000円)× 所得税率 | 総所得金額等の40%が上限。復興特別所得税分(×1.021)を含めて計算 |
| 住民税 基本分 | (寄附額 − 2,000円)× 10% | 総所得金額等の30%が上限 |
| 住民税 特例分 | (寄附額 − 2,000円)×(90% − 所得税率) | 住民税所得割額の20%が上限。ここを超えると自己負担が2,000円を超える |
出典:総務省ふるさと納税ポータル「税金の控除について」。上限額の目安を出す式(所得割額×20%÷(90%−所得税率×1.021)+2,000円)は自治体の案内(神戸市)に掲載されている一般的な式で、寄附の時点では所得割額が確定していないため、あくまで目安です。
役員が会社から受け取る役員報酬は給与所得です(国税庁タックスアンサーNo.1400「給与所得」。役員の報酬・賞与も給与に含まれます)。事前確定届出給与として受け取る役員賞与も給与所得なので、上限を見積もるときは「月額報酬×12 + 賞与」の年間合計を、シミュレーターの「給与収入」(源泉徴収票の「支払金額」に当たる額)として入れます。
出典:総務省「税金の控除について」、国税庁タックスアンサーNo.1400、神戸市「ふるさと納税の控除のしくみ」
役員報酬の月額別・上限の目安
総務省の目安表(給与所得者、社会保険料は収入の15%と仮定、住宅ローン控除・医療費控除なし、中学生以下の子は計算に含めない)から、役員報酬の月額に近い年収の行を抜き出しました。賞与がある人は年収に足して見てください。
| 役員報酬 月額 | 年収(賞与なし) | 独身・共働き | 配偶者控除あり |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 360万円 | 約3.4〜3.8万円 | 約2.6〜2.9万円 |
| 40万円 | 480万円 | 約5.6〜6.1万円 | 約4.5〜4.9万円 |
| 50万円 | 600万円 | 約7.7万円 | 約6.9万円 |
| 60万円 | 720万円 | 約10.8〜11.3万円 | 約8.6〜10.4万円 |
| 80万円 | 960万円 | 約16.3〜17.0万円 | 約15.4〜16.0万円 |
| 100万円 | 1,200万円 | 約23.9万円 | 約22.9万円 |
総務省ふるさと納税ポータルの「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」を自治体(鹿児島市・益田市)が転載した表の前後の行から。年収が表の行の間にある月額は幅で示しています。「共働き」は本人が配偶者控除を受けていない場合、「配偶者控除あり」は配偶者に収入がない場合。iDeCo・小規模企業共済の掛金、医療費控除があると下がり、配当を申告すると上がります。
- 社会保険料は実額を入れる。目安表は「収入の15%」前提だが、役員は標準報酬月額の上限や賞与の上限で割合が変わる
- iDeCo・小規模企業共済は「小規模企業共済等掛金控除」の欄に。全額所得控除なので、掛金が大きいと上限がはっきり下がる
- 配偶者が自社から給与を受けていて配偶者控除の対象外なら「共働き」の列で見る
- 退職金は分離課税なので、役員退職金を受け取った年でも上限の計算には原則入らない
配当がある役員の上限の考え方
自社の株式(持分)の配当や、保有している上場株式の配当がある役員は、配当を申告するかどうかで上限が変わります。配当所得は原則として総合課税ですが、上場株式等は申告分離課税や申告不要を選べ、非上場(自社株など)は少額配当なら申告不要を選べます。
| 配当の種類 | 選べる扱い | ふるさと納税の上限への影響 |
|---|---|---|
| 上場株式等の配当 | 申告不要/申告分離課税/総合課税 | 申告不要なら上限に影響しない。申告すると住民税所得割が増えて上限は上がるが、確定申告になるのでワンストップは無効 |
| 非上場(自社株など)の配当 | 原則 総合課税。少額配当(1回10万円×配当計算期間の月数÷12 以下)は所得税の申告不要を選べる | 所得税で申告不要にしても住民税では申告が必要(総合課税)。住民税所得割が増える分、上限は上がる |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1330「配当金を受け取ったとき(配当所得)」、No.1250「配当所得があるとき(配当控除)」、中央区「配当所得の住民税の申告」。令和5年分(令和6年度住民税)から、所得税と住民税で異なる課税方式を選ぶことはできなくなりました。
ポイントは2つです。1つ目は、上場株の配当を申告して配当控除や損益通算を受けると、確定申告をすることになるのでワンストップ特例が使えなくなること。2つ目は、非上場の自社株の配当は所得税で申告不要を選んでも住民税の申告が要るので、住民税の所得割(=上限の土台)は増えることです。配当が絡む年は、ポータルの詳細シミュレーターに配当の額を入れるか、自治体の住民税の窓口で確認するのが確実です。
出典:国税庁No.1330、国税庁No.1250、中央区「配当所得」、練馬区「配当所得」
ワンストップ特例が使えない役員のチェックリスト
ワンストップ特例は「確定申告の不要な給与所得者等」が、寄附先5自治体以内で使える仕組みです。確定申告をする年は、申請書を出していてもワンストップは無効になり、その年の寄附をすべて確定申告の寄附金控除に書き直す必要があります(国税庁 確定申告の手引き)。役員で当てはまりやすいのは次のケースです。1つでも当てはまれば確定申告で控除します。
特に自宅兼事務所の家賃を自社から受け取っている社長は、ほかに申告の理由がなくても確定申告が必要なので、ワンストップは使えません。会社員のまま自分の会社から役員報酬をもらっている人は、会社員のまま役員報酬をもらう人の確定申告で確定申告の流れを書いています。
出典:総務省「ふるさと納税ワンストップ特例制度」、国税庁 確定申告の手引き(ワンストップ特例の申請が無効となる場合)、国税庁No.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」

報酬を変えた年・退職した年の見積もり方
上限はその年の1〜12月の収入で決まります。役員報酬を期の初めに改定した年、会社員を辞めて役員報酬が大きく変わった年は、改定前の月数×旧月額 + 改定後の月数×新月額(+賞与)で年収を見積もってシミュレーターに入れます。
- 年収が確定するまでは上限の8〜9割にとどめ、12月に残りを寄附する二段構えにする
- 会社員を辞めた年は、前の会社の給与+役員報酬を合算する(源泉徴収票が2枚になる年は確定申告)
- 社会保険料は報酬の改定で変わる。標準報酬月額が変わった月以降の実額で見積もる
- 12月の役員賞与(事前確定届出給与)は年収に入れる。賞与の額が決まってから寄附すると確実

2026年・2027年の制度変更で変わるところ
| いつから | 変更 | 役員への影響 |
|---|---|---|
| 2026年分(令和8年分)の所得税 | 基礎控除・給与所得控除の引き上げ(所得税側) | 住民税の基礎控除は変わらないので、上限の目安は大きくは変わらない。所得税率の境目付近の人は特例分の計算にずれが出て自己負担が2,000円を超える場合があるという分析がある(ニッセイ基礎研究所) |
| 2027年の寄附(令和10年度分住民税)から | 特例控除に定額の上限(道府県民税77.2万円・市町村民税115.8万円、指定都市は38.6万円・154.4万円) | 給与収入1億円相当以上の人が対象。通常の役員報酬の範囲では影響なし |
出典:財務省「令和8年度税制改正の大綱」(令和7年12月26日閣議決定)p.32-33、総務省 自治税務局資料(令和8年3月24日)、ニッセイ基礎研究所「税制改正でふるさと納税額はどうなる?」(2025年4月)。
よくある質問
まとめ
会社役員のふるさと納税は、役員報酬と賞与を給与収入として計算すれば会社員と同じです。違いが出るのは、自社からの家賃・利子、配当、2か所給与といった役員ならではの事情があるときで、その年は確定申告で控除する前提で寄附の計画を立てます。
- 役員報酬・役員賞与は給与所得。上限は「月額×12+賞与」をシミュレーターの給与収入に
- 上限の土台は住民税所得割の20%。iDeCo・共済の掛金で下がり、配当を申告すると上がる
- 自社から家賃・利子を受け取る役員、給与2か所、年収2,000万円超はワンストップ不可→確定申告
- 上場株の配当を申告すると確定申告になりワンストップ無効。非上場の少額配当は住民税の申告が必要
- 報酬を変えた年は「改定前の月数×旧月額+改定後の月数×新月額」で見積もり、8〜9割にとどめて12月に調整
- 2026年分の所得税改正で上限の目安は大きく変わらない。2027年寄附からの定額上限は年収1億円相当以上が対象

